第78章 恨めしげな表情

一条星夜は言葉に詰まり、しばし沈黙した後、いささか不自然に言い回しを変えた。

「……田舎の朝市というものに行ったことがない。見学してみたいと思ってな」

その理由は……辛うじて筋が通っていると言えなくもない。

橘凛もそれ以上言い争うのは面倒だと判断し、頷いた。

「勝手にどうぞ」

かくして一行は――大はしゃぎの一条湊の手を引く橘凛と、その後ろを歩く、強烈なオーラを放ち周囲から明らかに浮いている一条星夜――という奇妙な組み合わせで、賑わう朝市へと向かった。

朝市に足を踏み入れるや否や、一条湊は米びつに落ちたネズミさながらに目を輝かせた。水々しい野菜を眺め、威勢よく跳ねる魚や海老に触れ、...

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